【Vol.233】S君の就職

ポスドクって、ご存知でしょうか。大学院を出て博士(修士)号まで取ったのに、就職はおろか、大学内にもポストが無い状態の学生(者?)のことを言うのですが、今回のお話は、そのポスドク生のS君の就職が決まったという、めでたいお話です。

 振り返ってみると、十数年も前になるのでしょうか、我が国の科学技術振興施策の一環として、優秀な学生に、積極的に博士号を取得させるという、大号令が下ったまではいいのですが、企業は即戦力として、学術的な知見よりビジネスの分かる人材を求めますし、何より誤算だったのが、大学の独立行政法人化が進む中で、大学内にポスドク生を受け入れるポストが激減したことです。末は博士か大臣かと言われたのに就職先が無いなんて、彼らがドクターを目指したときに、一体、誰が想像したでしょうか。

 さあそうなると、今度はそのポスドクを就職させようというプロジェクトがスタートしました。そして、そのモデル大学の一つになったのが、九州大学だったのです。
 ご縁のある九州大学の、そのうえ仲良しのF先生が、そのご担当になったのですから、私としてもお手伝いしない訳には参りません。こうして、ポスドクセミナーを企画し、そのプログラムをつくり、主任講師を自ら志願することになったのでした。

 さて、およそ二年間、述べ70余名のポスドクセミナーを進める中で感じたこと、それは、いかに彼らに実践的な学習をさせるかということでした。具体的に言えば、企業の中で研修することが一番の早道だということです。
 こうして、ポスドク生の中から志願した者を上京させ、SIが給料を払って研修させるスキームがスタートしたのでした。このスキーム、勿論、大学に異論が出るはずはありませんが、予算を付けることはできませんでした。SIで研修することの必然性が見つからない、それが理由とのことでした。
 自ら良かれと思って始めた実践研修が、まるでドンキホーテ状態になってしまいましたが、3名の研修生がそれぞれ半年間SIに籍を置き、クライアントに同行した実践研修、まさにビジネスの最前線を知る、最高の経験だったのではないでしょうか。

 前置きが長くなりましたが、その三名の中で、就職が最後まで決まらなかったS君が、ひょっこりと来たのです。手土産を携え、就職が決まった報告に来てくれたのです。
 上場企業、しかも自分の専門ピッタリに決まったS君、本当に眩しく見えました。そして、お世辞でしょうが、こう言ったのです。「最後の面接で、SIで研修していたと言ったら、ああ、あのSIに居たのかと、それが効いたようなんです」。
 まあ、半分割り引いたとしても嬉しいじゃありませんか。SIのことを知っていた面接官が、それで気に入ってくれたなんて、ポスドクセミナーを企画し、実践研修までやった私にとって、最高のご褒美です。
 今年、九州工業大学から来ているO君も、もうじき大学に戻って、産学連携事業のコーディネーターになる予定です。O君もS君と同じように、来た時とは違って、だんだん逞しくなってきたようです。こうして、SIで研修したポスドク生が、SIとそのクライアントとのご縁を広げて、活躍してくれると思うと、まさにSIは、梁山泊的プラットホームであると実感するのです。

 こんなことがあるので、インターンシップを止める訳にはいきません。次のインターン生はどこから、そしてどんな人が来るのだろうか、楽しみになるのです。