【Vol.232】ひげ

 髭(ひげ)を剃りました。面白いですね、気付く人と気付かない人、色々なんです。会って直ぐに、「あれっ?」と言う方、しばらく話をしていても、全く気付かない方、こちらから剃ったんですと言って、初めて、「いつもと違い、何か変な感じでしたが、剃ったんですね」、という具合いです。ですが、いずれの方も同じことを言われるのですから不思議です、「どうしたんですか?」。

 どうしたんですかと言われても、暑くなったし、めんどくさいので髭を剃っただけですから、特に何かがあった訳ではないのですが、私の身に何かがあったのではないか、そのように、皆さんが心配してくれるのです。どうも、とんでもない一大事があって、それで髭を剃ったのではないか、そう思われているようです。まるで、出家して僧侶になるために剃髪した、そんな感じです。

 でも皆さん、剃髪というのは、男子は仏門に入るためのものですが、女子の場合は婦女子の刑罰として科した場合もあり、その多くは姦通罪であったようですから、何かがあった、その何かは、あまり良いことではないのです。仏門に入るといっても、成功している時に、あえて自ら出家することはありません。要するに剃髪するのは、俗世で何か不祥事を起こした時や、あるいは世俗に嫌気がさした時なのです。
 要は、皆さんのご心配は、私が何か不祥事をしでかしたか、または、私の身に何か悪いことでもあったのではないかという、そのようなご心配であるということです。
 ですから私としては、不肖、不徳の致すところと言う訳にも行きませんし、第一、何も悪いことはしていないのですから、なぜ、このように見られたのか、その訳を考えてみることにしたのです。こんな面白いこと、そうはありませんからね。

 さて、あらためて剃髪の意味ですが、それは何かがあったときに、自らを律する、ある意味でケジメみたいなものなんです。特に女子の場合は、大事な頭髪を剃るのですから、余程のことです。この、余程(よっぽどとも言いますが)の意味は、かなり、ずいぶんということですから、本当に大変な覚悟なのです。
ですから、皆さんが私を見ていたその背景には、何か大変な出来事があり、そのケジメをつけるために髭を剃ったのだという、推論があったということではないのでしょうか。 そのように考えると、何のためのケジメなのか、それが問題です。私にとってはただの髭なのに、ケジメの象徴になってしまったのです。

 さてさて、色々考えましたが、ケジメをつける理由も心当たりも無い私にとって、やはり、今回の騒動(ははは、大袈裟ですが)は、結論的に推論すると、それは、私の髭は、婦女子の頭髪にも匹敵する大事なもの、そのように皆さんは見ておられたのではないか、そう思うのです。
 このことは、逆に言えば、私には、唯一、髭しかない、それなのに…、というご心配があったのではないか、そのような結論に至ったのであります。
 ホントに皆さん、ご心配をおかけしました。(深謝…)

 でも、ご心配は無用です。私のひげは、ちゃんと生えてくるのです。ここだけは、ね。