【Vol.199】横綱相撲

 最近、相撲界のスキャンダルが話題になっています。相撲協会が訴えたり訴えられたり、現役の横綱が裁判所に呼ばれて証言したり、まさに前代未聞、信じられない出来事です。日本の国技と言われる相撲ですが、こんなことが続くようでは、国技なんて言わずに、SUMOUと呼ぶほうがいいのかもしれません。相撲は普通のスポーツとは違う、いや違う筈なのですが、その違いが分からなくなったような気がします。今、相撲の在り方が問われています。
 特に横綱は、他のスポーツには無い地位であり、その権威も特別なものです。負け越せば即引退、まさに最高位の権威を守るための厳しい掟が踏襲されているのです。横綱は、権威の象徴であると同時に、その権威を失墜させることさえ許されぬ、まさに、降りることが出来ない最高峰です。この意味は、最高峰に登頂したら下界に戻ることは無いというのですから、そこにずっと留まるか、それが出来なくなったら、行き先は天国しかありません。横綱とは、力士なら必ず望む、或いは目指す地位ですが、辿り着くと同時に引き返すことが出来なくなる、そんな神様の一歩手前のような存在なのです。
 ですから、横綱相撲は下位の力士が取る相撲とは違います。天上に一番近い者が取る相撲ですから、勝ち負けを超越した取り組みを示すことが必要です。つまり、横綱相撲とは、修行中の者に相撲道を教える行為とも言え、それだけ、横綱は崇高な存在なのです。

 さて、ビジネスの世界にも横綱相撲があると、私は思うのです。ビジネスでの横綱とは、売り上げの多寡を競ったり、同業他社を排除するようなことをしない、常に王道を歩んでいる、そんな企業です。王道とは、仁徳を根本とする政道です。企業で言えば、顧客からの信頼が厚く、自らの利益だけではなく、社会性を重んじる、そんなイメージの企業です。ただ、ビジネスの横綱企業は、相撲と一つだけ違う点があります。それは、引退が無いことです。例え、売り上げや利益が減少しても、しっかりと経営が継続している間は、終ることはありません。

 このように、顧客に信頼されながら社会に貢献する企業の在り方と、今の相撲界の現状を重ね合わせて考えると、問題点がハッキリと見えてきます。
 先ず、相撲協会が興行利益を優先させて、本当の横綱とは何かを教えなかったことが問題です。親方も、弟子が強ければ、その言動や品行に問題があっても目をつぶり、協会は勝ち星の数だけで、横綱や三役という地位を与えてしまいました。そうなると、勝ち続ければそれでよし、そのような協会や親方の姿勢が、ひいては横綱・三役だけではなく、下位の幕下力士に至るまで、相撲が国技であることの本質を忘れさせてしまったのです。
 力士の方も、力が衰えて負けるようになると、相撲道に精進するどころか、稼いだ金で早々と引退して転身することを考え、せっせとサイドビジネスに精を出す始末です。また、本来、そのようなところに出入りすること自体、力士にあるまじき行為と見られかねないのに、いかがわしい風俗店に出入りするようになり、挙句、大麻に手を出して逮捕される力士まで現れてしまいました。
 国技とは、一国の代表的な競技です。その国の文化を象徴することでもあるのです。日本の国技に、儲かればいい、という理念は無い筈です。企業も同じ、ただ儲かればいい筈はありません。

如何でしょうか皆さん、ビジネス界の横綱相撲、ご認識いだたけたでしょうか。
 えっ、SIの地位? う~ん、やっと三段目ですかね。もっと足腰を鍛えて…、あっ、大事なことを忘れていました。
 私、もうチョンマゲが結えないのです。ははは。