【Vol.183】ハイユ国

 今、てんぷら油で作るバイオディーゼル燃料が注目されています。
 廃てんぷら油をディーゼル燃料として使用するというもので、クルマの燃料としても全く問題は無いそうです。コストも、集めることが上手く行けばそう高くはならず、採算的にも十分に使える燃料です。
 これまで、この使用済みてんぷら油を、石鹸にしようという運動もありました。でも、やはり燃料として使い、ディーゼルエンジンが回って車が走ったり発電するという方が直接的に役立つような気がします。さらに、二酸化炭素の排出量も桁違いに低くなり、まさに、廃てんぷら油から作るバイオディーゼル燃料は、経済的にも環境的にも言うことナシの画期的な燃料と言えましょう。
 しかし、このバイオディーゼル燃料、穀物(例えばトウモロコシ)から直接作れば安いのかというと、そうでもないらしいのです。農家(本当は先物買いをしている商社?)が燃料として使えることに気付いてから、穀物より燃料の原料として売る方が儲かると、北南米諸国の農作物が軒並み高騰しているというのです。化石燃料の典型である原油がこれだけ高騰して、バイオ燃料にシフトしようとした途端、また投機筋が入って高騰する。何か空しい気がします。

 話を戻して、廃てんぷら油を利用するバイオディーゼル燃料は、一度てんぷら油として使用したものですから、コストはその時点で吸収されたものと言えます。コストのことは済んでいるのです。ディーゼル燃料として使う為に若干のコストは掛かりますが、いずれにしてもゼロから作るものではありませんから安上がりです。
 また、この使用済みのてんぷら油を捨てるのも大変でした。飲食業から出る廃てんぷら油などは、産業廃棄物として扱われるので、捨てるにも費用がかさみます。てんぷら油を固めて捨てるように出来る固化剤もありますが、いずれにしてもゴミとなり、環境への負荷となっているのが現状です。御用済みでしかも厄介者だった廃てんぷら油、それが、バイオディーゼル燃料として生まれ変わり、エネルギーとして再利用されるとは、まさに一石三鳥というものです。

 さて皆さん、この国に大量に排出されていた廃てんぷら油がディーゼル燃料になる。この事実は、結果として新しい燃料が産出されているのと同じだとは思いませんか。油という資源が、てんぷら油として埋蔵されていたのです。地下ではありませんが、全国、人が住んでいる全地域に蓄積されているのです。しかも、再利用するのに製油コンビナートみたいな設備や、ややこしい機械装置は不要です。思い出しましたが、ボーキサイト(アルミニウム鉱石)からアルミ地金を作るのにかかるエネルギーを100としたとき、廃アルミ缶からアルミニウムを再利用する為のエネルギーは、たったの「2」だそうです。
 新品を作るより、廃品利用の方が大幅に安く、しかも簡単に新品同様になる、これって凄いことだと思いませんか。そう考えると、我が国にはものすごい量の、再生可能な資源が存在していることに気付きます。今までは、国内では産出されなかった(もしくは希少)資源が、鉱石や原材料のカタチではなく、使用済みのモノの中に、大量に蓄積されているのです。廃てんぷら油やアルミだけではありません。自動車、家電、携帯電話などに使われている「レアメタル」など、産業界や生活に必要不可欠な材料が、実は豊富に埋蔵されているのです。

 さあ、原油価格が最高値を更新し続けている中、産油国の方々に言ってやりましょう。
 「我が国は、世界一の産油国ならぬ廃油国であり、世界一の再生資源国だ」とね。
 そして、その「ハイユマネー」で世界中の油田を買い占めるってのはどうでしょうか。
 えっ、そんなことを企てたらオイルマネーで日本中が買われてしまうって? うーん、どっちにしても勝ち目はないのですかねぇ。くやしい~!