【Vol.160】ならぬことはならぬものです

 会津藩士の子供は、10才になると「日新館」(会津藩校)への入学が義務付けられ、その以前、6歳頃から藩士としての心得が繰り返し繰り返し教え込まれたそうです。それが有名な「什の掟」(じゅうのおきて)で、会津精神の基本となっています。
それは、
一 年長者の言うことに背いてはなりませぬ
二 年長者にはお辞儀をしなくてはいけませぬ
三 戯言を言うことはなりませぬ
四 卑怯な振る舞いをしてはなりませぬ
五 弱い者をいぢめてはなりませぬ
六 戸外で物を食べてはなりませぬ
七 戸外で婦人と言葉を交えてはなりませぬ
  ならぬことはならぬものです(いけないことはいけない)
 …というものです。

 最近、福島県の会津若松にお邪魔する機会があり、薄々は知っていたのですが、あらためてこの掟を教えていただきました。如何でしょうか皆さん、この掟は、いじめをはじめとした現代社会が抱える問題にも見事に答え、しかも、その解決方法までも教えてくれているかのようです。これらの教えは、残念ながら現代では聞かれなくなったことですが、昔の家では親が子供にきちんと教えていた、当たり前といえば当たり前の事柄です。

 一体、いつの頃からこの国でこのような教えが聞かれなくなったのでしょうか。いや、言えなくなったのかも知れません。でも今だからこそ、この教えに耳を傾けなければならない時代かと思います。
 開発やビジネスは人生と一緒で、そこでは多くの人たちと触れ合い、あるいは議論をしながら、如何により良い方向に行くか、それが一番大切なことです。多くの人たちと触れ合うためには、それなりのルールが必要です。ルールとは絶対的なもので、理屈抜きにまもらなければいけません。ときに、自分にとっては理不尽なことでも、先達たちが決めた、それこそ「ならぬものはならぬもの」がルールなのです。
 昨今、「それは合理性がない」とか「説明がつかない」といった理由で、このようなルールが無視され、効率や経済性だけを優先させることが多くなった気がします。結果、相手のことを平気で無視するような、とにかく売り上げを伸ばせ、何が何でも一番になれという、競争することだけが目的のような経営者が増えてしまったようです。逆に、無用な競争の結果が、この閉塞感につながっていると気付いた賢明な経営者は、私がいつも言う「安全・環境・法令順守」を新しい経営指針として、この困難な時代を乗り切ろうとしています。正に、顧客のためにいけないことをしてはいけない、「ならぬものはならぬ」、ではないでしょうか。

 さて、サンタクロースがやって来る季節になり、我が家ではひとしきり「サンタさんはいるのかいないのか」という話題になりました。何でも、娘の友達は、はじめから「そんなものはいない」と言われ、プレゼントは親から手渡しで貰っていたそうです。「なんか、夢がない話だね」。我が家の意見はそういうことになったのですが、そこで私は思わず叫んでしまいました。「サンタさんはいる。いるものはいるのだ!」と。
 皆さん、サンタさんはいますよね、絶対に。♪…ジングルベ~ル、ジングルベ~ル…♪