【Vol.157】会社をクライアントだと思えば

 ビジネス・プロデューサー養成セミナーを始めてもう10年。
受講生から泉のように湧き出るアイデアと、熱い想いや意見など、実は私が一番勉強させてもらっています。本当に有難いことです。
元々、このセミナーをやろうと思い立った理由は、様々な事業フィールドを持つ企業から参加した人たちが、立場や業種の壁を越えて新しい事業や商品の開発を具体的にしてしまえば、それはそれは面白いことになるのではないかという仮説でした。
ルールはただ一つ、他人の意見やアイデアを否定しない。これだけです。基本的にはバーチャルなんですが、実際には、成果を自社に持ち帰って本当に事業化してしまうこともあり、文字通りの実践セミナーとして大好評です。

 成果も十人十色、それも受講生の数だけ在るのですが、今回はその中でも共通的に重要かと思われることをご紹介したいと思います。それは、受講生が自分の会社のことをクライアント(依頼人・顧客)という視点でみるようになる、ということです。
社員が自分の会社をクライアントとみるなんて、変だと思われるのかもしれませんが、要は、第三者の視点で自社を冷徹にみるということです。

 さて、私の仕事はクライアントの経営資源を第三者の視点でしっかりとみて、それらを活かして開発を進めることですが、この、第三者の視点というのが非常に大切です。例えば、クライアント自らが重要視している経営資源も、実際には陳腐化したり競争力が失せてしまったら、ダメなものはダメ。冷たいと思われても、俯瞰・鳥瞰した結果の判断を曲げることはできません。
開発には、このような冷徹な目が必要です。しかし、会社の中にいる人は、今までのしがらみや上司のことなど、要は、冷徹な第三者の視点でみることがなかなか出来ないのが現状です。

 セミナーでは、グループに別れて与えられた課題を皆で理解し、様々な意見をぶつけ合いながら、如何に強いビジネスモデルを作るか、この繰り返しを半年間やります。
開発テーマはバーチャルなので、自社への利益誘導などに腐心することもありません。ましてや自分の利益など、グループの仲間と考えるのですから有りえません。ですから、もっとも本質的なことは何か、或いは、最適なことは何なのか、それだけを考えるようになるのです。
そうこうしていると、誰でも無意識のうちに、第三者の視点で冷静に物事を考えるようになり、結果、私がクライアントを診る視点と同じようになっていくのです。

 ここであえて「診る」というのは理由があって、クライアントをただ眺める、或いは観察するのではなく、医者が患者さんを診察するように、問題点や課題を発見し、その状態や原因を探り出す作業と同じだからです。
 私は、いつも第三者の視点でクライアントを診ていますが、同じように皆さんも、会社をクライアントだと思って診れば、それまで気付かなかった新しい発見が出来るようになるのではないでしょうか。それを、このセミナーが証明してくれました。
 自分の会社をクライアントだと思うこと。案外、開発の近道かも知れません。