【Vol.138】定年という規制

 ジャンボのパイロットとご一緒する機会がありました。小さい頃から、パイロットと言えば憧れの職業です。そういう想いもあって、同じ世代の方なのにドキドキしてしまいました。さすが、制服姿は似合うだろうなという物腰です。
 飲むほどに酔うほどに、立ち入った話にもなります。どういう訳か定年の話になって、こう言われたのです。「もう辞めたいんですよ」。「えっ、だってまだまだ先のことでしょう?」思わずそう言いました。
よく聞くと、同じことを考えている人が多いそうです。航空会社はある程度の勤務条件を選択できる仕組みがあるそうですが、この方もそして多くのパイロットは、なるべく早く辞めたいと思っているそうです。しかも、過去にパイロットの採用を控えた時期があって、その谷間を埋めようと申し出れば、自分の定年を延長することもできるというのに、です。
早く辞めたい理由は、パイロットというのは傍目には華やかに見えるかも知れないが、「もうボロボロ」ということでした。そうか、そんなに大変なんだと思うのと同時に、自分で退職時期を決める「自己定年」ができる自由度に妙に関心してしまいました。

 皆さん如何でしょうか。私の会社には定年がありませんし、勿論、私にもありません。しかし、多くの企業には定年制度があり、その歳になれば有無を言わさず、退社を余儀無くされるのです。
少子高齢化社会になって、定年延長の議論と要求は山ほどありますが、定年ナシを言い出す企業は殆どありません。パイロットの話を聞くほどに、割り切れない気持ちになりました。一体、定年とは何なのでしょう。
 定年は停年とも書くようで、辞書を引きますと「法規・規則によって退官・退職する決まりなっている年齢」とありました。読んでホッとしました。だって、法規や規則とあったからです。
これからの時代、規制緩和が進む中、法規や規則であるならば、この定年制度は規制なんですから、廃止される方向に行くのは間違いありません。今、護送船団方式で強くなってきた我が国が、それが所以で弱くなってしまい、その舵取りを大きく変えようしています。目指すのは自由度。古い時代の規制を廃止して、如何に自由度を大きくして強くなるかです。

 定年の話をしていると、個々の能力をどう評価するかとか、社員年齢のバランスをどうするか、延長するなら何年か、結局、従来の規制の枠内でいじっているだけの感じです。もう沢山です。定年の議論は、規制廃止のことなんだと言えば良いのです。
 皆さん、定年という規制を外しましょう。