【Vol.135】確かなものには旬が無い

 「この技術は今が旬なんですよ」。言われて、違和感を感じました。だって、旬の時期が過ぎたなら、陳腐化するということじゃあないですか。そうじゃない、本当の技術は、旬などとは無関係だと、そのとき強く思ったのです。

 今まで私は、色々な会社にお世話になり、多くの会社を訪問させて頂きました。そして、ちゃんと経営しておられる会社になればなるほど、そこには実に素晴らしい技術やノウハウがあり、それを支える人材が居られることを知っています。ですが、私の知る限り、それらの技術やノウハウが旬のものであるなどと、言われたこともないし、考えたこともありません。技術の旬…。一体、どういうことでしょうか。考えてみました。
 多分その方は、新しい技術が開発されて、大きな成果が出ていることを「旬」と表現したのだと思います。しかし、私はしっかりした技術に旬などはないと思いますし、逆に、旬があるようなものは確かな技術ではないと考えたいのです。
例えば、新幹線の技術です。今も先端部が丸い形の0(ゼロ)系が走っています。最新の700系は時速280キロで運行されていますが、その技術の大元(おおもと)は今も変わりません。40年前に開発された0系の基本技術が今も使われているのです。見掛けも変わり、スピードも段違いに速くなっているのに、支える技術の基本は変わらない。そうなんです、確かな技術はずうっと通用するものなんです。

 逆に、流行り廃れが激しく変わる商品や製品には、確かな技術が無いことに気付きます。誰でも作れるものであったり、模倣されるようなものに確かな技術などは不要であるかのように、それに用いる技術も移ろいます。結果、お客様の嗜好もコロコロと変わってしまいます。

 一般的に、旬とは魚介類や果物・野菜などがよくとれて味の最もよい時のことを言います。また、物事を行なうのに最も適した時期のことでもあります。しかし確かな技術には、そういう意味でも、旬などはあり得ません。強いて言えば、確かな技術とは、ずうっと旬が続いているようなものかも知れません。
 どんなにのぞみが速く走ろうと、その技術を、今が旬だという人はいません。

 私たちの周りには、この新幹線の技術のように、何十年経ってもしっかりとしている技術があるのです。そんな確かな技術を再認識して使わないと損ですよね。

 さあて、今夜の飲み屋さんの旬の肴は何かな~っと。