【Vol.132】知財の数

 こんな話を始めて聞きました。なんと、出願件数をご担当が決めているというのです。
ビックリしましたよ。だって、戦争するのに、こちらはこのくらいの兵隊でやろうかと、相手も見ずに自分の都合で決めているのと同じじゃないですか。
その会社は、知財のご担当が年間の出願件数を大体このくらいで…、と決めているというのです。予算の関係かなんか知りませんが、知財で戦おうというのが戦略なのに、今年はこのくらいの数でいいだろうという考え方は、一体、どうしてできるのでしょうか、とても不思議な気持ちになりました。
業界のライバルが、或いは新規に参入してきた相手がいて、その脅威に対応する為にあるのが戦略です。その肝心要の戦略を、こっちの都合で決めるなんて、ハナから負けてもいいと、最初から白旗をあげるのと同じです。
 いきなり、テンションが上がってしまったのですが、敵前逃亡という、戦時なら銃殺刑になってしまうようなこの話。皆さんはどう思われますか。実は、この話を聞いたときに、私は、この国のビジネスマンに根強く残る「大企業病」を感じました。

 大企業病。
改めて考えてみると、実に不思議な病気です。大企業になれるように、いや、なったのですから、ホントは立派な会社です。社員も立派な筈ですよ。でも、大きくなると不具合がおこるのですから不思議です。
多分、それまでちゃんとやっていたことを忘れ、ここまで来たのだから、これからは少し手を抜いたとしても、同じようにちゃんとするだろうと思ってしまうのでしょう。自力で頑張ってきて、ホッとして、他力にすがる…。これって、人間の本能かも知れません。

 よく考えると、私たちを取り巻く最大のリスクは、このホッとする気持ちです。ホッとすることは悪いことではありません。でも、問題なのは、手を抜いても同じ結果を期待する、或いは楽をしようとする、根拠の無い「おねだり」的な甘えです。何もしていないのにご褒美をねだる。その、思い上がった心情は、言い換えれば、「慢心」とも言えましょうか。ちゃんとやれるのに、ちゃんとできなくなるマイナスのチカラ。それが、慢心という、誰にでもある心の働きです。
 話を戻します。
 知財の出願件数を決める要素は、その会社の知的なエンジンの出力と、その会社を取り巻く経営環境の圧力です。
そして、その出力と圧力がつり合うとき、出願件数は自ずと決まります。
その会社がいる業界で、或いは分野の中で、会社のポジションをどう高めるのか、アクセルを踏めば高くなるし、離せば落ちて行くのです。その為の知的財産権を確保する具体的な作業が出願です。

 さあ、あなたの会社の知的エンジンをオーバーホールしてみませんか。出力が思うように出ないのなら、どこかが錆び付いているか、燃料が切れかかっているか、いずれにしても、気付かないうちに何かのマイナスのチカラが働いているに決まっています。
 エンジンは、ショウジキモノです。