【Vol.120】知財系列

 最近、毎日のように、知財に関する記事を新聞紙上で見ています。「知財」という活字は、もう、目新しくは無くなってしまったようです。ビジネスマンが当り前に「知財戦略」という言葉を口にする今日の姿は、つい10年前には予想も出来なかったことです。正に、時代が変わりつつあります。
 そのような中で、今回は知財に関するメディアの報道や、種々の視点や見方について、私がどのように感じているかを書きたいと思います。知財に関する情報の裏に見え隠れする、新たな潮流(トレンド)についてお伝えしたいからです。そしてその潮流は、今後の知財戦略を考えるうえで、最も基本的、且つ、本質的なものかと思われます。

 早速ですが、皆さんは「系列」という言葉をご存知ですね。言うまでもなく、「ケイレツ」と外国でも理解されている、企業間の結合関係のことで、元々、日本企業が独自に培ってきた仕組みです。旧財閥系の資本を導入したり、同族で資本などを持ち合って、お互いの同盟関係を強固にして、対外的な競争力を高める経営手法です。今回お伝えしたいのは、その系列を構築する際の新たな動きです。
 系列を構築するためには、「絆(きずな)」が必要です。絆とは、仲間から離れがたい情実、或いはメカニズムみたいなもので、これがないと系列は維持出来ません。実は、その系列関係を繋ぎ留める絆が、従来のような資本などではなく、知的財産権を軸に構築されるというのが特徴です。日本の先進的なプロパテント(知財重視)企業が密かに狙う真の知財戦略が、知財を軸に進められているのです。グローバルな競争力をより強くするためには、強い企業同士が協業・団結しなければ負けてしまいます。そのための新たなスキームが、知財で構築する系列です。

 私はそのような意味から、「知財系列」という言葉を使い始めました。知財で繋がる、知財系列。耳慣れない言葉ですが、間違いなく、新たな潮流です。
 さて、知財が新たな系列を生み出している事例は、注意深く見ているとあちこちにあります。DVDの新方式をめぐる動きや、ハイブリット車の世界的な派遣争いなど、メディアに取り上げられる事例はほんの氷山の一角です。私達には見えないところで、日々、知財系列は生まれています。SIがお手伝いしているクライアントも、知財での覇権を握る為に、文字通り奮闘していますし、その具体的な事例をお伝えできないのが残念です。(機密保持契約がありますので)
 そうして見ると、自動車、家電、鉄鋼、鉄道、道路交通システム、セキュリティー、電子書籍、などなど…、知財を通して透けて見える新たな系列が、いろいろな形で既に構築されていることに気付きます。そして、今後は流通・小売といった、従来はどちらかと言うと知財に疎かった業種・業態も、知財系列という、新たな協業や同盟関係が生まれて行くのでしょう。

 振り返って見れば、私がお手伝いしてきたクライアント同士を結ぶ「赤い糸」は、元々知財だったのですから、そうなることに違和感はありませんが、皆さんは如何でしょうか。過去の「護送船団」とは違う「知財船団」とも言うべき、新たな企業の経営戦略である、知財系列の構築。そして、その覇権を握る為の知財への投資。今、正に、知財資本時代が始まったのです。
 如何にグローバルな「知財系列」を構築するか、日本の企業が苦手にしていた「ディファクト・スタンダード」を勝ち取る戦略が、知財系列の構築であると考えれば、そう難しいことではありません。
 プロパテント企業で構成する知財系列。知財立国ニッポンの新たなスローガンです。