【Vol.93】OSとアプリケーション

 最近、ある人と話していたら、人間にもOSとアプリケーションソフト(以下「アプリケーション」と言います)がある、という話になりました。
 ご存知のようにOSとはオペレーティング・システムのことで、コンピュータの最も基本的なソフトウェアです。コンピュータ全体の効率的運用のための手順や手法を定めた基本プログラムで、これがなければハードとしてのコンピュータは全く役に立ちません。
 対して、アプリケーションソフトとは使用者の業務に応じて作られたプログラムのことで、ワープロや表計算、データベースなど、様々な業務をより効率的にするシステムです。そのOSとアプリケーション、二つのシステムが人間にも必要で、どちらかが欠けてもダメだね、という話です。

 事の始まりは、「学校の勉強は出来たのだが、社会人としての基本的なことが全く分かっていない…」という彼のグチからです。曰く、「試験などの暗記物はめっぽう強いのだが、社会の常識的なことになるとチンプンカンプンなんだよね」。重ねて「セオリー通りのことはスラスラ言えるのだが、実践的な話になると下を向いちゃうんじゃぁね」と、かなり厳しく突っ込みます。余程、腹に据えかねたのでしょう、そこで出たのが「要するにOSがダメなんだよ。」という言葉だったんです。「基本が出来ていないから、個別のアプリケーションは強いのかも知れないけど、最も基本的な判断とか常識が、まるで分かっちゃぁいない。」最後はため息になってしまいました。

 このお話、皆さんはどうお考えでしょうか。そう言えば、学校の成績は優秀だったけど社会人になった途端に精細さを欠いてしまった人、結構いますよね。特に、有名進学校を出て有名企業には入社したが、その後…?なんていうパターンです。きっと、教科書や入試問題は一生懸命に勉強されたのでしょうが、躾や礼儀作法といった常識として必要な基本的プログラムの勉強を疎かにしてしまったのかも知れません。

 そう言う意味で、人間のOSは大切な土台です。そして、その上で動く高度なソフトウェアとしてのアプリケーションを身に付ければ、それこそ、バランスの良い理想的な言えるのでしょう。
 ひょっとして、最近、企業の不祥事が多発しているのとダブらせると、この話もバカには出来ません。効率ばかりを追って、肝心要の経営戦略の意思決定が出来ずに衰退していく企業は、結局、経営の基本プログラムが昨日していないことと一緒です。「今からでも遅くはないから、OSとアプリケーション、特にOSはしっかりしようね。」最後はお互いに慰め合って別れたのですが、案外、心に残る話でした。

 えっ、私のOSですか。皆さん、この話はデジタルが前提ですよ。ですから、アナログ回路しかない私のOSは「……。」アハハ、無かったりして。