【Vol.88】自由になるのはココロだけ。だから・・・

 開発を進めている過程で、必ずと言って良いほど困難にぶち当たります。
技術的なことで止まる事もありますし、開発する周辺の環境、例えば会社の方針が変わるとか共同開発先の事情とか、まあダメな時はダメなもので、残念ですがそういう場合は案外多いものです。そしてこのような時、開発を進めてきたメンバーの中では、凄く落ち込む人と案外ケロッとしている人、様々な人間模様が浮かび上がります。人間模様なんて少々オーバーですが、それを見ていると色々な教訓を得る事も、これまた多いものです。今回は私が好きな(と言うのも変ですが)教訓を一つ。

 バブルがはじけた後の話です。当時その会社の顧問だった私は、正に「寝耳に水」状態で、親会社の倒産を知りました。直ぐに債権者が乗り込んできて、そこで進めていた開発テーマは直ちに全て終了するよう指示がありました。私より、社員の方々の心境は如何ばかりか、それを思うと本当に悔しい気持ちをどうしようもありませんでした。勿論、顧問としての私は契約終了。そして、残念ながらお定まりのリストラが始まりました。そのとき、殆どの開発スタッフは別会社への出向や転属になりました。「もう、二度とこの開発は出来ないのでしょうね」。そんな多くの声の中で、「いやぁ、私の心の中では開発を進めておきますから、大丈夫」。そう言うSさんのお顔が眩しく見えました。開発に対する姿勢や感性に親近感を待った私は、Sさんが一番落ち込むのだろうと思っていたのに、その彼が一番冷静でした。

 また、具体的に言えないのが残念ですが、ある会社のOさんはかつて開発に失敗したらしく、不遇な期間がありました。その方が開発の現場に復帰したのです。過去を知る人は少ないのですが、それを知る私はどのように耐えていらしたのか、それを訊きたいと思いました。お酒の勢いを借りたフリで「辛かったでしょう?」、そう言う私に、「全然。だって心の中では失敗したとは思っていなかったし」。続けて「周りの環境と合わなかったのですよ」と、平然としています。「でも、本音は恨みもあったでしょうに。」粘る私に、「自分の心は誰にも干渉されませんから。」そう言って楽しそうにお酒を飲んでおられるのです。

 私の好きな教訓は簡単です。「ココロは唯一自由にできるもの」です。
人間一人ひとりココロがあり、誰も触れることは出来ません。心は、その人さえしっかりしていれば、唯一自由にできるものです。だから・・・、だとしたら何があったとしても、いつかは必ず来るチャンスに備えておかなければ、損じゃあ~りませんか。