【Vol.68】身の丈と身の程

 会社を興し、社員の方々が増えてきて年俸制を導入してからもう15年になります。最初のころはこれといった仕組みも無く、それこそ私が相手の目の輝き具合を見て「えい、やっ」で決めていたものでした。最近は社員の皆さんが自発的にこしらえた「評価システム」があり、お互いに評価をし合う仕組みになっています。このシステムがなかなかのもので、ここ数年は殆ど問題なしに更改作業が済んでいます。何しろ、半年毎の契約更改ですから、七面倒くさい手続きなどはご免です。幾つかの項目についてチェックしてそれを集計すると、その方の相対評価が出る仕組みで、半年毎の好不調も凡そ判断できるようになっています。

 経営者としては、随分楽な仕組みになっているのですが、その集計結果をもとに、最後は私が年俸(一年分を提示します)を決定します。そのとき、私なりに考えている規範に鑑みて年俸を決めているのですが、最近、自分で言うのも変ですがこの考え方で決めると、本当に自然に決める事ができるので、皆さんにもお伝えしたいと思うのです。その規範とは「身の丈」と「身の程(ほど)」です。
 身の丈とは背の高さという意味で、私の考えている身の丈は会社の大きさ、量的なものです。程とはころあい、度合いや程度のことで、社員の方の地位、能力ということでしょうか。この身の丈・身の程を、私は契約更改に臨むとき一番大切な規範として、皆さんの年俸決定と、その方々に相応しい仕事の内容、即ち職務分掌とその為の条件を提示しているのです。

 会社の身の丈については、私はいつも「大きくすることはしない」と宣言しています。それは大きくする事が会社の目的ではなく、内面的な質を良くしたいからです。身の丈が大きくならないと、当然誰でも一律に昇給することはムリですから、どうしても資質や能力を判断して、その程度に連動する報酬を提示しなければなりません。多くの方の能力が向上すれば、恐らく会社の業績も良くなり、少しは背も伸びるでしょう。そうすれば、その身の丈に見合った金額にもなるのです。又、分掌や権限も同じで、その方に相応しい、つまり身の程に見合うようになるのです。
 要するに、「年功序列型賃金」などあり得ませんし、「年功昇格」をやっていては、どうしても本当の身の丈と身の程から外れてしまうのです。

 いつの頃からか、この身の丈・身の程という規範を意識するようになリ、併せて評価システムと連動するようになって、私は本当に契約更改が楽になりました。誰もが納得する、そして、成果と連動する報酬があれば、活力が失われる事などありません。今のところ、私は大満足なのです。
 えっ、それでは誰が私の身の程を見ているかですって?そんなこと決まっているじゃありませんか。上を見れば家内しかいないのですから…。