【Vol.66】見えない空洞化

 最近はまっているのが「ハネザワガーデン」です。東京の広尾にある旧満州鉄道総裁の邸宅で、戦前からの庭園や住居を残したまま、お洒落なレストランに仕立て直した今話題の大人の空間です。オープンしてから暫く経つのですが、私はずっと知らずにいました。
 ところが、何と、その企画運営をされている方が知り合いのご子息であるのを知り、重ねてビックリした次第です。敷地は約3000坪あり、建坪は1000坪。東京の一等地にある「最後の豪邸」といっても過言ではありません。いつも混んでいて、最近では予約をしないと余程ラッキーでなければ入れません。客は外国人も多く、まるで外国の名所レストランにいるような気分になります。でも、お勘定はそんなに高いわけではなく、どちらかというとコストパフォーマンスは良い方ではないでしょうか。

 つい先日もお客様とご一緒しながら、楽しい時間を過ごしたのですが、周りのお客様を見ながら気付いた事がありました。それは、このお店のお客様の雰囲気です。外国人も多く、それだけで違った雰囲気ではあるのですが、日本人のお客様の雰囲気が、全然通常のお店とは違うような気がしたのです。
 なんと言いましょうか、一口で言えば洗練されたお客様(私は別ですが)ばかりなのです。落ち着いた感じの大人たちが、ゆっくりとしゃれた会話をしながら食事を楽しむ。そんなお店です。別に若い人達が悪いわけではありませんが、ここには子供や若い人はあまり見えません。そう、オトナでなければ入れないような感じがする、敷居の高いお店なのです。

 よく考えてみると、昔は大人たちだけが入れるお店がありました。別にいかがわしいことをするのではなく「子供や若い人(若造とも言います)はご遠慮願います」と明確に意思表示をしているお店です。そういうお店で大人たちはくつろぎ、お洒落な時間を過ごしていたのです。
 それが最近はどうでしょうか。どのようなお店にも家族連れ、それも赤ちゃんを抱いて見える方も多くなりました。いわゆる高級店でもおかまい無し。お金を払えばそれでよし。そんなお客が増えています。
 どこに行っても、ジャリンコや若造(言葉は悪いのですがあえて言わせて頂きます)がいる。そうして、本当の大人たちのくつろぐ場所が無くなってしまったのではないでしょうか。何でもかんでも中流、平等もいいのですが、世代までも一緒くたにしてしまうのはいけません。
 ハネザワガーデンで、今まで見えなかった、ある意味での「空洞化」を見たような気がしました。