【Vol.52】戦略はスピード

 どうも、経営環境が一段と悪くなって行きそうです。戦後から続いていた大量生産によるコストの優位性が大きく揺らいでいます。もっとも得意だった技術の優位性も、諸外国に脅かされるようになってしまいました。
 このような構造的な問題以外に、今、世界中を震撼させているテロという、これまでに経験したことの無い脅威が、あらゆる企業を襲っているからです。もう、対岸の火事ではありません。島国ニッポンに居るから安心だと思っている人は、よっぽどのノンキ者か、事態を直視したくない現実逃避型人間の何れかでしょう。
 こうなると、どのような対応策が必要か、はたまた、どのような視点で経営を考えるのか、その、最も根本的な経営戦略が重要になってきます。目先のコスト削減とか、営業先の拡大とか、そのような戦術的な問題ではなく、最も上位概念の「戦略」が必要なのです。
 そこで考えてみました。今、何が一番大切なのかと。そして、私が考えた一番優先されるべき戦略は、「スピード」です。

 これだけ、先行きが不透明になると、中・長期的な計画や対応策は、ある意味で効果的ではありません。場合によっては、期間的に固定化された考え方に拘束される結果になり、却って間違うこともあるでしょう。
 そのようなことが無いよう、素早く環境変化に対応する為に、兎に角、スピードが肝心です。先ず、環境変化を素早くキャッチする、スピード。その変化に対応する策を構ずる、スピード。そして、体制を再構築して行動する、スピード。そして、万が一その対応策が間違っていたり、その対策よりも環境変化のほうが早かったりしたら、直ちにハンドルを切り替えて正しい方向に向かうのも、スピードなのです。

 こうして、私はクライアントに対し、一斉にスピード重視のご提案をするようにし始めました。勿論、今までも新事業開発や新商品開発にはスピードが大切だったのですが、より一層、スピードが重要なのです。開発テーマの選定も、マーケティングも、試作も、そして結果の評価も、兎に角スピードが一番優先です。そうすれば、結果、うまく行かない場合も傷口は小さく済みますし、立ち直りも早くなるというものです。
 そう言えば、私のクライアントである外食関連の会社は、出店してからの見直し期間を、より短縮する戦略を打ち出しています。詳細にマーケティングをした結果の出店ですが、思うような結果が出ないと素早く撤退するのです。その決定を下すまでの期間を短縮する、言わば「新陳代謝」のサイクル期間を短くすることが、競争力となっているのです。

 今、思考の速さがチカラです。