【Vol.45】『ついで』の本質

 「ついで」という言葉があります。漢字で書くと「序で」です。字の通り、順序、次第、順番のことです。また、良いおり、機会、あることを併せてする良い機会、などの意味があります。

 最近、この「ついで」について、考えることがありました。
 私が、「それでは、ついでのときに参りましょう」と言ったことに始まります。その方は、出来る限り早く自分の工場を見て欲しいとの事で、私も、そのようにしようと、秘書に日程調整をお願いしました。秘書は、私の思いを敏感に察知して、最短の日程を調整してくれて、訪問となった訳です。
 工場見学の後の食事の席で、「いやあ、ついでとおっしゃったので、もっと先にお見えになると思っていました」。私は「えっ」と、思うのと同時に、昔のことを思い出しました。

 もう、何年も前の話です。それまで私は、「ついで」という言葉は、「その内、適当なときにそっちの方面に行く用事があったら、出来れば寄ること」と思っていました。ですから、「ついで」と言われた途端に「後回し」にされることと理解していましたし、そうなってしまうことが度々ありました。
 ずっとそう思っていながら、何かの折、「ついで」という言葉を辞書で調べる機会がありました。
 そうしたら、私の理解とは違い、逆に、「良い機会」とか「良いきっかけ」といった、却って前向きな意味の方が大きいことが判ったのです。その上、順序良く計画するとか、機会を併せることで相乗効果を狙うといった、企画的な意味もあることが判ったのです。
 そうか、「ついで」とは早く行きたいという意思表示と、その為の手段なのだ。だったら、チャンスを掴む積極策だ。そう理解したのです。それから、私は積極的に「ついで」を多用するようになりました。また、ある人がこう言ったのも覚えています。「『ついで』と言っておけば、相手が気楽に受けてくれて、余計な気を使わせずに済む効果もあるのではないでしょうか」。そうです。ついでという言葉の裏には、相手を気楽にする、思いやりの心もあるのです。

 今、私は「ついでビジネス」をあちこちで提案しています。
 企業の持つ設備や技術。ノウハウや経験。物流や人流。そして顧客情報までを「ついで」に組み合わせることで、負担を増やすことなく、大きな相乗効果を生み出す、新しいビジネスモデルです。
 業種・業態を超えて、様々な企業がアライアンスを組み、夫々の経営資源を持ち寄りながら、本業の「ついで」に、ニュービジネスを進めて行く。言うなれば、「ついで」が「ついで」を呼んで、皆がついでに良くなる。そんな、理想的な仕組みを作る試みです。

 「ついで」と書いて「アライアンス」と読む。今日から貴方もそうしませんか。