【Vol.44】トップの若返り人事

 最近、大企業トップ経営者の「若返り人事」報道が、随分、増えたように思います。それも、「○○人ごぼう抜き」とか、「平取締役からの大抜擢」など、当事者も周囲の方も「意外」と思えるような論調です。正に、従来の慣習や序列を無視する、「超」大胆な人事が当たり前になったような感じです。
 若返ったと言っても、欧米の30、40代というような年齢とは言えませんが、それでも、長年、高齢者トップが当たり前と思っていた私達にとっては、驚くような事であることに間違いありません。記者会見の席に座って溌剌とした表情の新社長と、その横の、いかにもご苦労様でしたと言いたくなるような旧社長を見比べると、何でもっと早く替わってやれなかったのかと思ったりします。

 経営の荒波を乗り越え、激流の中で舵取りをする経営者に求められるものは、知力は勿論のことながら、むしろ強靭な体力、瞬発力と持久力が必要だと思うのですが、失礼ながら、このような高齢者でも何とか成っていたものだと、妙に感心してしまいます。
 でも、よくよく考えてみると、我が国の多くの企業トップが、周囲が心配するほどの高齢者でも務められたのは、本当の経営をしていなかった、或いは、する必要も無かったという事かも知れません。

 誰がトップになっても同じ。それが大企業の実態だったと言えば怒られそうですが、「護送船団方式」に護られ、その上、業界団体においては足並みを揃える事だけに注力する。そんな手法が、経営戦略である筈は無いのに、如何にもそれが経営者の資質であるかのように見えた時代が、本当に、本当に長かったのではないでしょうか。
 そうした経営者達が、何の失敗も無く、その代わり何の成功もせず、企業の頂点に順送りで君臨していたのです。成功が無いのならまだ良いとして、周囲の環境変化に気付かず、しかも、問題の先送りを繰り返した結果が、今日の「負の資産」を引きずる原因だと言ったら、厳しすぎるでしょうか。

 そんなことを考えながらテレビのニュースを見ていると、あの元気な小泉首相が映っています。ハッキリと、自分の言葉で話す我が国の新しいリーダーの姿に、思わず「頑張って」とエールを送るのは、私だけではありません。
 人気の由来は、ただ若々しいだけではありません。彼の、「本当に良くしたい」、「出来る事は直ぐにも行動する」、そのような本音の姿勢が好感を与えているのです。

 先の短い人が、目先の「短期計画」を計るより、先の長い人が先々の為に、中・長期的な「戦略」を構築する。
 当たり前の事が、やっと始まりそうです。