【Vol.26】酸化と還元

 ご存じのように、物質が酸素と結合して変質することを「酸化」と言います。モノが燃焼することも酸化作用の一現象ですし、錆びるのも酸化が原因です。多くの場合、酸化したモノは劣化する方向に変質して、再び利用することには困難が伴います。「錆付いたものはしょうがない」と言ってしまうのはこの為です。金属表面に塗装することや、食品パッケージに入っている小さな袋は、その為の「酸化防止剤」なのです。

 大学の研究成果を技術移転する仕事でこんなコトに出会いました。「酸化した食品を還元すると、綺麗な色にもどるんですよ」。加工食品の権威である教授のお話です。赤血球が混入した食材を調理加工した製品、つまり酸化した赤血球を還元加工すると、そのコゲ茶に変色した赤血球の色が、綺麗な赤色に戻るというのです。味や食感に変わりはないのに、色が元通りになる。私は目から‘ウロコ’になりました。「酸化・還元作用」は中学の理科で習いましたが、こんな事も出来るんだと、私にとっての大発見です。

 「そうか、還元作用は結構使えるぞ」。私は早速この横展開を考えることにしました。加熱したり化学変化を利用したりして加工したモノを、還元作用でリフレッシュすることができれば、用途は限りなく広がります。ちょっと考えただけでも食品以外にも多くの分野で利用できる技術です。
 しかも、この還元作用の本質は、元の性質や性状に戻すということであり、再加工するものではありません。もっと大きな概念で括れば、「還元ビジネスというのもいい」。そして、ほんとは元気なのにシガラミという錆が付いてしまった人や、ただ年令的に条件から外れてしまった人材も還元できたら…。
 そんなことを考えながら、ふっと、新幹線の窓越しに夕暮が綺麗です。
 茜色というのは、還元色なのでしょうか。