【Vol.23】経費の経費

 技術移転のポイントの一つに、地域を越える、ということがあります。その理由は、いわゆる「お里が知れた」技術や知的財産権は、地元に「しがらみ」が多く、何かと障害が多いからです。
 これは、私の長年の経験から申し上げることで、絶対にそうとは限りませんが、経験則として気付いた勘所です。ですから私の場合、技術移転を図るとき、地域を遠く離れたところで仕事を進めると、成功する確立が高くなるのです。

 先日、いつものやり方で、遠方に出掛けてコーディネートする案件がありました。ところが、そのご担当が出張できないとこぼしているのです。何と、出張先が遠いので、近くの、要は同地域内の企業に移転先を探すようにと、上司から言われたのです。その上司とは経理担当の管理者で、出張経費などをチェックするのが仕事だそうです。

 ああ、何という不合理でしょう。遠いといっても県外に出るくらいの旅費に対して、杓子定規にダメを出す。ましてや、肝心なビジネスの内容を聴きもせずに決めてしまう。何という損失。何という無駄でしょうか。この組織は、ビジネスチャンスを潰すこのような愚行を、一体、何回繰り返してきたのでしょうか。腹を立てても始まりません。今後はできる限り、私どもの経費で同行できるように手配した次第です。
 それにしても、このような話は、この国のあらゆる組織に共通の問題であることは、間違いありません。経費を無駄なく使うための管理システムに、実は多大の経費が必要になっているのです。こんなバカなことがあるのに、何とかなっているわが国は、言い換えればすごい国かも知れません。
 そう考えたら、少しは腹の虫も納まりました。