【Vol.20】褌と土俵

 知り合いのマンション業者と話していたら、こっそり耳打ちしてくれました。「最近、ネット長者が高級マンションをあっさり買うんですよ」。続けて、「でも、すぐどっかに行っちゃうんですがね」。つまり、eビジネスを仕掛けて株を公開し、その売買益でネット長者になった人が高い物件を買ったはいいけれど、すぐに株価が落ちて元の木阿弥…。ということらしいのです。話を聞いて、ヤッパリと思いました。
 いつも、素朴な疑問として感じていたことです。手口は同じ。ネットビジネスのアイデアを考え、ベンチャーキャピタルから多額の出資を受け、大々的に宣伝し、着実な売り上げと収益が出てはいないのに、その将来性だけを印象付けて上場し、保有株を売って多額の利益を上げる。そして、調子が悪くなったらそのままドロン。ま、言葉が悪くて申し訳ないのですが、分かりやすく言えば、そういうことです。
 一体、どこに事業としての実体があるのか、言う方も乗る方も、よく分からないまま資金が集まり、株が公開される。ダメでモトモト、そう割り切れば良いのかも知れませんが、冗談じゃありません。どっかがおかしいと思いませんか。そう、全部が他人の褌(ふんどし)なのです。そして未だ作られてもいない土俵をバーチャルで見せてその気にさせる。こんな話、ゲームなら許せますがそうは行きません。褌も借り物、土俵も設計だけ、そして立派な相撲取りになってみせる…。そんな、言うだけのニワカスモウトリが増える社会はろくなものではありません。
 他人のふり見て我がふり直せ。自分のコトとして考えると、気を引き締めなくてはいけません。私たちは、実体としてのニュービジネスをお手伝いするビジネスプロデューサーとして、本物の「力士」を増やさなければならないのです。